否定の作り方
単純否定と意志否定
池間方言では否定には単純否定と意志否定があります。
単純否定
単純否定は動詞の語幹に「あん(-an)」または「ん(-n)」をつけることで作ります。
単純否定は、意志の入らない否定を表します。
例1.なうやひー っゔぁー ふぁーんが
(なんで おまえは たべないの)
2.からー けっとーちぬ たかかいば、あずまむぬーぎゃー ふぁーんよ
(彼は 血糖値が高いから、甘いものは 食べないよ)
〇単純否定の過去形は「あん」「ん」を「っだん(-ddan)」に変えて作ります。「にゃーん」「みーん」の過去の形はそれぞれ「にゃーっだん」「みーっだん」です。意志否定には過去形は作れません。
例1.ばー いかっだんそぅがどぅ、からー いつたい。
(私は いかなかったけれど、彼は 行った)
〇「ふぁう(fau)(食べる)」の単純否定は、「ふぁわん(fawan)」ではなく、「ふぁーん(faan)」になります。
〇「うむー(umuu)」「そぅる(suruu)」は単純否定は「うむあん)umuan」「するあん(suruan)」ではなく、「うむーん」「そぅるーん」となります。
意志否定
意志否定は動詞の語幹に「あじゃーん(-azyaan)または「じゃーん(-zyaan)」をつけることで作ります。
意志否定の形は意志の形である「あでぃ(-adi)」「でぃ(-di)」に「あん(-an)」「ん(-n)」がついて規則的に変化したものです。「ふぁう(fau)」の意志否定は「ふぁわじゃー(fawazyaan)」でなく、「ふぁーじゃーん(faazyaan)」になります。
意志否定は話者、主語が意志を持って動作をすることを表します。日本語共通語とちがって3人称の主語にも使えます
意志否定には、「じゃーだかー」という条件形もあります。
1. ばー いかじゃーん
(私は 行かない)
2.っゔぁが いかじゃーだかー、ばんまい いかじゃーん
(あなたが 行かないなら 私も 行かない)
存在動詞の否定
〇「あい(ある)」の否定は「にゃーん(ない)」です。「うい(いる)」の否定は、「うらん(いない)」あるいは「みーん(いない)」です。「うらん」は助動詞や補助動詞の「うい」の否定に使い、「みーん」は主動詞の「うい」の否定に使うのが普通です。
例1. ばー んなーぎゃー んまがー みーん
(私は まだ 孫は いない)
2.あいぬ むぬいや にゃーん、いー
(そういう 言い方は ないね)
3.じかんな にゃーんば じょ すぐ いでぃでぃ
(時間が ないから すぐ でかけよう)
「だ」「である」の否定
〇「である」「だ」は、ふつうは表現する必要はありませんが、「でない」は、「あらん」といいます。
例 かりゃー がっこー、やくば あらん。
(あれは 学校だ、役場じゃない)
形容詞の否定
〇形容詞の否定は形容詞の語幹に「っふぁ にゃーん」をつけます。過去形は「っふぁ にゃーっだん」となります。
例1.あかっふぁ にゃーんば、とぅいてぃがー だみ
(赤く ないから とったら だめ)
2.ばー いつぶすっふぁにゃーん
(私は 行きたくない)
〇「~ずに」「~ないで」の意味を表すには否定の「ん」や「じゃーん」をとって「~だ」をつけます。
例1.ぶとぅーぎゃー むちゃだ、いつがみまい やーん ういぶすむぬ
(夫を 持たずに(=結婚せずに)いつまでも 家に いたい)