Digital Museum for Endangered Languages and Cultures The Ryukyu Archipelago: Nishihara, Miyako Islands

デジタル博物館「ことばと文化- 琉球列島」宮古諸島 西原地区

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study:sketch:pronunciation:consonants [2015/05/14 06:22]
study:sketch:pronunciation:consonants [2020/10/01 20:41] (現在)
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 +====== 基本子音の発音と文字表記 ======
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 +==== 1.さ行音====
 +さ行音は、「あ」行と「い」行 /​sa/​、/​si/​は日本語共通語とほぼ同じで「さ」「し」のように発音します。/​s/​と/​u/​は「そぅ」 「そぅ」は、sの音に唇を丸めた「う」の音をつけて発音します。
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 +例:そぅー(潮) {{suu_4ch003m.wav}}
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 + ​まーそぅ(塩){{maasu_4ch004m.wav}}
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 + ​そぅでぃ(袖){{sudi_4ch004m.wav}}
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 +====2.ざ行音====
 +ざ行音は、「あ」と組み合わせると、「じゃ([ʑa]」のようになり、[za]という音はありません。「い」「う」と組み合わさると「じゅ([ʑu]のように発音し、[zu]もありません。/​ɨ/​とだけは組み合わせが可能で、[zɨ]と発音されます。[zɨ]は「ず」と表記します。
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 +例:ずー(土地) {{zii_4ch004m.wav|}}
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 +====3./​s/​と/​ɨ/​====
 +/​s/​と/​ɨ/​は、sの音に唇をひいた「う」の音をつけて発音します。ひらがなでは「す」で書いて、「そぅ」と区別します。人によってはこの音を「すぃ」と書く人もいます。その場合「そぅ」は「すぅ」と書いて区別します。
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 +例:すー(酢){{sii_4ch003m.wav}}
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 +====4.た行音====
 +た行音の /​t/​は、/​a/​「あ」との組み合わせ「た」/​ta/​は、日本語共通語と同じように発音します。/​u/​と組み合わせたときは、/​tu/​「とぅ」と発音します。唇を丸めた「う」の音を付けて英語の前置詞のtoのように発音します。
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 +例:ひとぅ(人) {{hitu_i0112.mp3}}
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 +====5.ti====
 +/​t/​と/​i/​「い」を組み合わせた/​ti/​は、「ち」ではなく、英語のteaのように発音します。/​ti/​「てぃ」と表記します。
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 +例:ひてぃつ(一つ){{hitici_i0112.wav}}
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 +例:てぃー(手){{tii_4ch003m.wav}}
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 +====6.だ行音====
 +だ行音の/​d/​は/​a/​と組み合わせた場合は日本語共通語の/​da/​「だ」とほぼ同じです。/​i/​「い」、/​u/​「う」とと組み合わせると、/​di/​「でぃ」、/​du/​「どぅ」となり、「とぅ」、「てぃ」の有声音になります。
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 +例:でぃー(杖){{dii_i0112.mp3}}
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 +例:みどぅん(女){{midun_i0112.mp3}}
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 +====7.は行音====
 + /​h/​は/​a/​、/​i/​との組み合わせは、日本語共通語/​ha/​「は」、/​hi/​「ひ」とほぼ同じ、/​u/​との組み合わせは、共通語と異なり英語のwhoのように上下の唇をつけずに発音する。人によっては、共通のように両唇をつけた[ɸu]で発音する人もいます。「ほぅ」のように表記します。/​f/​の音と区別します。
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 +例:ほぅに(骨) {{huni_i0112.wav}}
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 +例:ほぅなん(大波、津波){{hunan_4ch004m.wav}}
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 +====8 fの発音====
 +池間方言には日本語共通語になりfの発音が存在します。これはfのように上の歯で、下の唇を噛んで発音します。/​f/​は/​a/​、/​i/​、/​u/​と組み合わされます。/​fa/​「ふぁ」、/​fi/​「ふぃ」、/​fu/​「ふ」と表記します。
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 +例:ふぁうむぬ(食べ物) {{faumunu_i0112.wav}}
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 + ​ふー(来る) {{fuu_4ch004m.wav}}
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 + ​ふつ(吹く) {{fuci_4ch004m.wav}}
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 +====9.撥音「ん」====
 +「ん」は、語末に来るときは、共通語と同じ発音です。共通語と違って、語頭に立つことがあります。t,​d,​nの前では[n]、p,​b,​mの前では[m]、k,​gの前では[ŋ]で発音します。
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 +例:ばんまい[bammai](私も){{banamai_4ch004m.wav}}
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 +ばんとぅ[bantu](私と){{bantu_4ch004m.wav}}
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 +んてぃ[nti:​](満ちる){{ntii_4ch004m.wav}}
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 +んみゃ[mmja](もう) {{mmya_4ch004m.wav}}
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 +んば[mba](いやだ) {{nba_4ch004m.wav}}
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 +んぎゃな[ŋgjana](苦菜) {{ngyana_4ch004m.wav}}
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 +====10.撥音「ん゜」 「ん゜」====
 +撥音「ん゜」 「ん゜」は、mのように唇をつけたり、nのように舌先を歯の後ろにつけて、声を立てずに、鼻息だけで発音します。「ん゜」のあとにmが来る場合は、mを鼻息だけで発音します。
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 +例:    ​
 +ん゜む ​   {{hmu_4ch004m.wav}}                          
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 +「ん゜」のあとにnが来る場合は、nを鼻息だけで発音します。
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 +例 ん゜ぬ(昨日){{hnu_4ch004m.wav}}
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 + ん゜な(綱) {{hna_i0112.wav|}}
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 +=====11.促音「っ」====
 +促音「っ」は、子音を二つ重ねて、長めに発音するときに使います。「っ」が単語の途中にある場合は、共通語と同じ発音です。
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 +例: まっふぁ(枕) {{maffa_4ch004m.wav}}
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 +====12.「っ」が単語の最初にある場合====
 +「っ」が単語の最初にある場合は、「っ」のあとの子音を重複し、長めに発音します。“っふぁ”であれば下唇を噛み、fの形にして、噛んだまま長めにfの音を発音し、ffaのように発音します。
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 +例:っふぁ(子供) {{ffa_4ch004m.wav}}
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 +“っゔぁ”であれば、下唇を間でvの音を出し、噛んだまま長めにvvaのように発音します。 ​
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 +例:っゔぁ(あなた){{vva_4ch004m.wav}}
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 +“っそぅ”であれば、ssuのように長く発音します。
 +
 +例:っそぅ (白い){{ssu_4ch003m.wav}}
 +
 +“ってぃ”であれば、tを発音するために舌先を上あごにつけ、すこし無音のまま保ったあとで、「てぃ」の発音をします。
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 +例:ってぃー(キセル) {{ttii_4ch004m.wav}}
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 +====13.[za]、[zu]、[zi]はない====
 +[za]、[zu]、[zi]はありませんが、[zza]、[zzu]、[zzi]はあり、これらは単語として成立します。==
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 +例:
 +っざ(父)  {{zza_i0112.wav}}
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 +っぞぅ(魚) {{zzu_i0112.wav}}
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 +っじ(もらう) 
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 +====14.「ん」のあとに「っ」が来る場合もあります。=====
 +例:
 +んっつー(お汁){{nccII_4ch004m.wav}}
 +
 +====15.長音「ー」====
 +長音は、「ー」で表記します。「ん」にも長音があります。 
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 +例:
 +んー(芋) {{nn_i0112.mp3}}
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 +んーでぃ、はいんかい(うん、畑に){{nndihainkai_4ch004m.wav}}
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